吉徳これくしょん vol.19
江戸初期から中期にかけての民間の五月飾りは、幟や兜など、その多くが屋外に飾られていましたが、それらの兜には、頂に造花や武者人形をのせているものがありました。この人形がのちに兜から独立して飾られるようになったのが、現在の武者人形の発祥と考えられます。
屋外の武者人形には、往来に向けて見せることを目的とした等身大に近いほどの大きなものもありましたが、度重なる奢侈禁令などのためか、江戸中期以降は次第に小型化して雛人形と同様に屋内に飾られるようになりました。
小型化した武者人形はまた、
当時の工芸技術の発達や庶民文化の爛熟を背景に、より精巧なものも作られ、それらのなかには今日の眼から見る時、美術的にも優れた作品が遺されています。
京都では、飾りの主体となる武将の人形を「大将さん」と呼んで親しまれましたが、本品はそのなかでも立身出世の代表とされる「太閤さん」こと豊臣 秀吉をあらわした人形で、凛々しい姿からは男児の健やかな成長を願うこころが伝わってきます。