吉徳これくしょん vol.02
左義長(さぎちょう)羽子板は、内裏羽子板・京羽子板などとも呼ばれ、主に京都で作られました。木地に胡粉を盛り上げ、箔押しして極彩色した、美麗な装飾用の羽子板で、表には貴人たちを描き、裏には宮中の新春の儀式のひとつ、「左義長」を描いています。
左義長は正月15日、御所清涼殿の庭に青竹などを組み、藁で覆って火を放ち、陰陽師たちが囃しながら、帝の吉書・短冊・扇面などを焼く厄払いの行事です。これを描いた左義長羽子板からは、羽子板と正月との重要な縁起物的結びつきをうかがい知られます。
上流階級では左義長羽子板を祝儀の贈答に用い、また、姫のお輿入れにも持参させました。なお、この図柄は各地へも伝播し、のちの素朴な郷土羽子板にも、一筆描き風に簡略化されたものを多数見ることができます。
本品は、現存する左義長羽子板のなかでも、特に優れたもののひとつで、上部の葵紋から徳川家ゆかりの品と思われます。