吉徳これくしょん vol.07

 
鍾馗人形

 端午の節句の武者人形は、現在では雛人形と同じく室内に飾りますが、江戸時代の中ごろまでは、軒先など屋外に飾る「外飾り」が中心でした。外飾りの武者人形は総じて大型で、なかには等身大に近いものもありましたが、庶民の奢侈を戒める禁令の影響からか、次第に小型化し、往来に面して飾っていたものが、内庭や縁側に引っ込み、ついには座敷に並べられるようになりました。

  武者人形の題材は、いずれも男児の健やかな成長を祈念するにふさわしい、歴史上・伝説上の英雄豪傑たちです。関東では、鍾馗(しょうき)や金太郎が特に好まれたといわれ、概して動的な迫力ある作風を特徴としました。

  鍾馗さまは、唐の玄宗皇帝が病に臥している時、夢のなかに出現して、悪鬼を退治してくれた豪傑です。こわい顔をしているからか、今では優しく愛らしい子ども顔の人形の方が人気ですが、魔除け・厄除けといった端午の節句の本来の意味からも昭和30年代頃までは、武者人形を代表する存在でした。

  本品は、東京日本橋にあった名店・永徳斎の作で、いかにも悪鬼を退治してくれそうな、動きのある勇ましい姿をしています。

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