吉徳これくしょん vol.20

 
堀 柳女作「踏絵」

 昭和30(1955)年、「衣裳人形」で平田郷陽とともに人形界初の重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定された人形作家が、堀 柳女(ほり・りゅうじょ、明治30~昭和59・1897~1984年)です。

  柳女にとって人形作りとは、あくまで自身の内面的なものを表現するための一方法でした。幼い頃から裂(きれ)に強い興味を抱き、日本画を学んだり、竹久夢二らと交流したりするなかで、「手すさびから、偶然」的に作り始めたのだといいます。

  しかし、柳女は決して未熟な技で自己表現に徹しようとしたのではありません。昭和初期の人形芸術運動の中心的存在であった「日本人形研究会」に進んで参加し、伝統的人形師たちから本格的な技術を学び、素人細工から脱皮したのです。

  柳女は人形に、単なる美しさだけではない「本当の心」を表現しようとしました。それはまさに今日の創作人形界のさきがけであったといえましょう。

  今日に残る初期の作品は数少ないですが、記念すべき初個展に出品された本品は鏑木 清方の「ためさるる日」の人形化であり、その着想と技法は堀 柳女 芸術の原点をよく伝えています。

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