吉徳これくしょん vol.13
全国各地で作られた郷土人形の大半を占めるのが、素焼に彩色を施した土人形。なかでもその元祖ともいうべき存在が京都の「伏見人形」です。伏見深草の地は良質の粘土を産し、古くから様々な土器が焼かれていたこと、また京都という土地柄から上手物の衣裳人形や御所人形、御殿玩具などを見る機会が多く、その姿を写すことが可能であったことなどが、その成立の要因であったと考えられます。
伏見人形の販路は広く、地元の人々に愛されたことはもちろん、全国から参拝者が訪れる伏見稲荷のおみやげとして、また、北前船による海上大量輸送によって上方の様々な文物とともに各地に運ばれたため、広く庶民の節句人形として飾られました。
この上方下りの土人形は人気を博したとみえ、のちにそれぞれの土地で模倣されて、多くの土人形が生み出されました。これが、伏見人形が土人形の元祖といわれる所以です。
本品はその伏見人形を作る際に用いた原型です。この塑像に粘土を押し付けて、前後二枚の雌型を取り焼成、それに土をつめ、型抜きするという量産方法から、土人形は庶民にもっとも身近な人形のひとつになったのです。