吉徳これくしょん vol.21
浅い箱に土砂を敷き、小さな草木を植えたりしてミニ庭園を造り、これに陶製や鋳物製の人物・動物・寺社・家屋・舟などを配して、さまざまな情景を表わす「箱庭」は、昭和戦前頃までの東京では、夏の風物詩のひとつでした。
箱庭の始まりは中国に起源を持つ「盆景」からといわれ、庭造りの雛形や茶席での観賞物であったものが次第に庶民の間にも広まったと考えられます。日本人の小さなものを愛玩する感性や、庶民の大きな世界に対する憧れがあらわれたものともいえましょう。
それに用いる人形や小道具類は、多種多様なものが売られましたが、上等品は手ひねりの陶製で、江戸から明治にかけては主に浅草今戸や向島あたりに名工がいたといいます。
ここにご紹介するのは、明治頃に作られたものの一部で、近景用の大きな人形でも5センチ程度、遠景用ともなると1センチ内外の極小サイズとなりますが、日常の人々の姿態はもちろん、物語の主人公や各地の名所などが、実に情緒豊かに、巧みにあらわされています。